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来世へ蘇るための必需品

Updated: May 9, 2018

ファラオの埋葬品

埋葬される品々は新王国時代よりも随分と前から標準化され、故人の地位と経済力に見合った形で行われています。最も大切なものがミイラ処理をされた遺体を収める容器、食べ物の奉納、身を守ってくれる像やオブジェ、シャブティと呼ばれる召使いの像、家具、道具、武器、そして衣類です。それらに加えられているのが故人の地位を表す品々、来世で実際に使われるであろうと考えられた品々。その中の幾つかは象徴的に蘇りと危険から守ることを助ける働きをするものも含まれています。

・サルコファギ(石棺) 王族やエリート達のミイラ化された遺体は一般的に棺に納められ、そして蓋付きの石棺の中に置かれます。石棺に関することで興味深いのは、その形が時代によって変わり続けることです。古王国時代では長方形で、蓋はアーチ形天井でした。

第五王朝のウナス王のピラミッドの中で発見された石棺だと思われている巨大な箱は長方形でとてもシンプルな構造です。


▲サッカラの地下に造られたセラピウムの中に置かれている巨石の箱は、神牛のミイラを納めていた石棺だと解釈されています。しかし、新王国時代に入ると頭の方の二角が半円形に丸く、足下の角は直角というカルトゥーシュに似たデザインになります。


▲トトメス三世の石棺


そして同じ新王国時代でもアマルナ時代になると長方形に戻り、ツタンカーメンのミイラが入っていた三つの棺は、さらに三つの長方形の箱の中に納められていました。しかしツタンカーメン王の執事だったイニウイアは人の形で表された石棺です。


第19王朝に入ると再びカルトゥーシュ形に変わり、蓋の上に故人のミイラの姿を表した像が加わっています。

・棺

新王国時代の棺は墓荒らしによる破損が酷く、少ししか発見されていません。そして第三中間期の王族の棺は、それ以前の王族ではない人々の棺が流用されています。ラメセス二世の棺は本人のために造られたものではなく、第十八王朝のアイ王かホレンヘブ王、またはラメセス一世の棺が流用されていると解説されています。

王族の棺はミイラの形で表され、〝リシ Rishi〟と呼ばれる翼を広げた鳥と、羽のパターンが描かれ、横縞模様のネメス帽、額にウラエウス、手には王笏と殻竿を握っています。 ツタンカーメンを含めた幾人かの王族のミイラは小棺、内棺、外棺と三段階で納められ、ユヤとツヤの棺は良い保存状態で発見されています。

メリタムン女王の内棺

杉の木 高さ185㎝ 新王国時代 第18王朝 アメンホテプ一世

テーベ デイルエルバハリ テーベの墓358


メリタムン女王は第19王朝のファラオ・ラメセス二世と彼の寵愛した妃、ネフェルタリの間に生まれた娘で、後に父ラメセス二世の妻になった7人の妃の一人となります。

この内棺は現在までに発見された古代エジプトの棺の中でも秀逸なもので、保存状態も良く杉の木で制作された棺は時間による浸食も現れていません。

彼女の顔の表現は第18王朝のファラオ、アメンホテプ一世の特徴を表してることから、この棺は第18王朝時代に制作されたものだと解説されています。女王の被っている鬘のデザインは第17王朝の終わりから新王国時代の初期に現れた形式です。額には王族の証しであるウラエウスが描かれています。

アマルナの王族女性のカノプス壺

カルサイト 高さ52.9㎝ 新王国時代 第18王朝 アクエンアテン

テーベ 王家の谷 KV55

この葬祭用の壺の蓋は女王の頭が彫刻され、アクエンアテンの二番目の妃、キヤを表していると解説されています。

・カノプス具 カノプス(カノピック)の語源はアレキサンドリアの主な港だった古都カノプスで、財源となっていた都市です。オシリス神の神殿が建設され、冥界の神は〝人間の頭の蓋ついた壺〟という特殊な形で崇められていました。そして後のエジプト学者はミイラから取り出された四つの臓器が納められていた壺の蓋が人間と動物の頭で表されていたので、カノプス壺と名付けました。


カノプス具はファラオのミイラと共に霊安室の中に埋葬された品々の中でも重要な位置にあります。新王国時代では蓋のついた大型の箱の中は四つに区切られ、ファラオの顔が彫刻された四つの壺が納められていました。

・カノプス壺

ミイラの中から取り出された四つの臓器(肝臓、肺、胃、腸)が納められた壺のことで、ホルスの四つの魂と呼ばれる四人の神様が関係しています。各々の臓器はミイラ処理をして包帯で捲かれ、場合によってはミニチュアのマスクが与えられていたり、棺の中に納められる場合もありました。


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