究極の浄化と精製・白い禿鷲の女神ネクベト



ダチョウの羽で飾られた祝典用の大扇

木 金箔、ガラスとカルサイトの象眼 長さ124.7㎝


玄室の中で発券された二つの大扇の一つで、三番目と四番目の寺院の間に置かれていたものです。

暑く陽射しの強いエジプトの気候とハエが飛び回る環境の中で欠かすことができなかった扇は、呼吸から生まれる命の象徴で、生前だけでなく、死後にも重要な役割を果たすと考えられています。そして王の扇持ちの地位は儀式と官僚に関係するために重要な存在として位置づけられていました。


棒の先の金具の部分はパピルスの花を形どったもので、その上部に刻まれている三つのヒエログリフは〝ネフェル 善性 完璧さ〟〝ヘカ 統治〟〝アンク 生命〟です。

その上につけられたダチョウの羽が射込まれる半円形のパネルから上はパルムを表し、使われた数の合計は41羽です。



縦縞のパターンで構成された枠が表しているのは、区切り、空間または位置、ひとつの場面、一つのテーマなどです。


パネルの中央に描かれた二つのカルトゥーシュの上には太陽のディスクが乗り 更にその上にあるのは空を表す図形です。


カルトゥーシュ内は王の誕生名である〝ネブケペルレ〟と〝トゥタンカムン それぞれに〟と刻まれています。


その横には王権を表すシェンとワス杖、両脇に上部と下部エジプトを表す冠を乗せた禿鷲の女神ネクベト/女神ムトが翼を広げて祝福しています。


そして禿鷲とカルトューシュが乗っているヒエログリフは金を意味しています。



白い禿鷲の女神ネクベト

ネクベトという言葉は〝究極的な〟という意味です。


古都ネクヘブ(現在のエルカブ)の呼び名でもあり、ネクヘブはヒエラコンポリスと共に上部エジプトの二つの首都でした。前王朝時代で宗教と政治の首都だったネクヘンと付き添う古都ネクヘブは、元々の死者の街、ネクロポリスで、古代エジプト史で最も古い〝神託の寺院〟が現れた場所で、ネクベトの女神官たちは〝ムウ muu 母たち〟と呼ばれ、エジプトの禿鷲の羽で作られたローブを着ていました。


女神ネクベト、そして女神ムトの具現化した姿である白い禿鷲が象徴するのは〝浄化/精製〟で、禿鷲の形をしたヒエログリフは、繁栄、母、祖母、統治者という意味を表します。


総ての古代エジプトが統一された時に前王朝時代では古都ベネクトの地元の女神の位置から、上部エジプトを守る女神へと格上げされ、後にはエジプト全域が統一された時には、総てのエジプトを加護するパトロン(守護者)となっています。


女神ネクベトは頻繁に王の額に姉妹の女神ウジェト/ウラエウスと一緒に表され、この二人は〝トゥーレイディ 二人の淑女〟と呼ばれます。


一般的には大きな翼を広げ、足の爪で永遠を象徴するシェン・リングを掴み、王の頭上に飛んでいる状態で多く表現され、多くのペクトラルのモチーフとしても使われています。その姿の幾つかはエジプト下部の女神ウアジェドから派生したコブラの姿で描かれています。


古代エジプト人は白い禿鷲は雌しか存在せず、雄も雌と捉えて、雌は空と交わって繁殖すると考えられていたと解説されています。


ケプリ神のスカラベは精子を糞に入れて繁殖すると解釈されていたのと同じ捉え方ですから、女神ネクベトの化身である白い禿鷲が風と交わって繁殖するというのは、別の何かの比喩であり、暗喩として神話の中に組み込まれていると考えることができます。


▶︎アラバスターの軟膏瓶に続く

© 2015 by Hiroshi Makaula Nakae

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