古代エジプト人の後頭部

Updated: May 9, 2018


ファラオの冠がどのような形で表現されていたのかを知って疑問に思い始めたのは、それらの王冠が実際に存在していたのかということです。現状としてロイヤルクラウンは一つも発見されていないませんが、墓荒らしが奪ってしまったから発見されないのか、それとも初めから存在しない類いのものなのかは憶測の域を出ません。


実質的に冠を乗せて歩くなり動くなりするという行為を考えると、王冠の形や構造は実用的なものではありません。次に問題になるのが古代エジプト王家の人々の頭の形です。アマルナのプリンセスの頭像も後頭部が異常に伸びている姿で描かれています。


ツタンカーメン王の頭蓋骨は一般的な頭蓋骨よりもかなり後頭部が伸びている変形頭蓋です。頭の形を考えるとロイヤルクラウンの形は不適格なのです。



女王ノフレトの石像


第12王朝3代目のファラオ・アメンエムハト二世の娘であるノフレトは、第12王朝4代目のファラオ・センウセレト二世の四人の妻の中の一人で、彼女たい四人の妻は、同時にセンウレストの姉妹でもありました。


ノフレトという名前は〝美しい者〟という意味。彼女は〝王の娘〟〝セプトレ(王笏)の偉大さ〟そして〝二つの土地のレディー〟という三つの称号を与えられています。


夫のセンウセレト二世は石ではなく泥粘土の煉瓦で出来たピラミッド群をエル・ラフンに建設していますが、それは王女ノフレトのために造られたと解説されています。


王女ノフレトの石像は二体あり、デルタ地帯のタニスで発見され、双方ともに元々は別の場所から持ち込まれたと解説されています。女王の胸にチェーンで吊るされた飾り額には、夫の名前が刻まれています。今では虚ろになっていまっている眼には水晶とオブシディアンがはめ込まれていたそうです。



女王の石像は大きな鬘だと思われる横に幅広く見える特徴的な形ヘッドドレスを被り、額の中央にウラエウスが頭を上げています。


この像の様相で最も特徴的なのは、鬘と頭の対比によって顔が少し平べったく見えることです。そして両耳の後ろから降りている膨よかな髪の毛は先端に向けてカールし、乳房の上で丸いディスクで留められています。

このディスクの位置は乳房よりもかなり上部に当てられているので、乳頭ではなく、何か別のものを表現しているように見えます。



王族の女性の胸像

ライムストーン 高さ16㎝

新王国時代 第18王朝 カルナック神殿 カシェッテ(第一宮)



カルナック神殿の中にあるアムン神の神殿で発見されたもので、とても大きなヘッドドレスを冠った姿で現され、額にも王権を示すウラエウスが頭を上げています。


解説では〝大きな鬘(かつら)〟となっていますが、その他の像で鬘を表現したものとは趣が異なり、表現の中で髪の毛は表されていません。このヘッドドレスが表れるのは中間王国時代の末からで、後に女神ハトホルと関連づけられるようになったと解説されています。構造としては鬘よりも被り物、ヘッドドレスに近いものです。


デザイン的な要素は髪の毛の流れやまとまり、髪の毛を編んで造形的な美しさなど直接的に表現したものではなく、〝翼を広げた禿鷲〟の姿です。



頭頂部には鳥の胴体が明確に刻みこまれ、二本の足の爪は〝シェン〟のシンボルを掴んでいます。


次に奇妙なのは、翼を広げた鳥の尻尾の下から現れている薄めの厚さのパネルのような板は細い溝が短い幅の間隔で刻まれていることです。


シェンの輪 永遠の加護

古代エジプトで〝永遠の加護〟を意味します。


シェン・シンボルの最も早期の現れは、第三王朝時代のジョセル王の階段ピラミッド複合体の中のレリーフだと解説されています。


シェンは隼の姿をしたホルス神が爪で掴んでいるイメージが多いのですが、禿げ輪の女神ネクベトも同じようにシェンを掴んで顕されています。

リングを伸ばしたものを〝シェヌ〟と言い、現在ではカルトューシュと呼ばれます。その中に王族の名前が入り、神からの永遠の加護を受けて、生前も死後の世界でも悪のスピリットから守られるという意味になります。


ロゼッタストーンの中でのカルトゥーシュは〝名前〟という意味で使われているとされ、それが二つに切り離されている象形文字もあり、それは〝切る、別ける、離す〟という意味だと解説されていました。半分に切り離された一片が〝切る、別ける、離す〟という意味なのであれば、完成されているシェンの意味は〝繋がっている、一体の、一つの〟という意味でとらえ直すこともできます。


禿鷲の足の爪に掴まれたシェン・シンボルの位置は、頭頂葉と側頭葉と後頭葉の三つの部位の接点です。この観点から捉え直すと、繋がりを現すシェン・シンボルは、頭頂葉と側頭葉と後頭葉の三つの部位の接続点であり、それは神々の加護または力と繋がっている姿を現していると解釈することもできます。


シェペンウェペト二世の石像

グラナイト 高さ130㎝

第三中間期 第25王朝 カルナック神殿 カシェッテ(第一宮)


カルナックのアムン神殿で見つかったシェペンウェペト二世の石像は、末期王朝時代第25王朝(ヌビア朝)のシャバカタ王の時代のものと解説されています。エチオピアの王は、王族の力を守るために女性の親族を〝アムン神の妻〟という宗教的に重要な地位に指名しています。


彼女のコスチュームはの女王と女性の神官たちが着ていたもので、〝神との誓約〟というタイトルを現しています。


このシェペヌペトの石像が被っている大きな鬘は、前の「王族女性の胸像」と似ている、ネメスとクハトを合体させたような形で、額の中央からはウラエウスが頭を上げています。

鬘の表面に刻まれたデザインは、翼を広げた禿鷲の羽の流れで現され、後頭部の左右には鷲の足とその爪で〝永遠の加護〟を意味する〝シェン〟のシンポルが刻まれ、後ろ側の様相は羽で現された髪の毛の流れが腰まで続いています。


▶︎ツタンカーメンとアテン神の都アマルナに続く

© 2015 by Hiroshi Makaula Nakae

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